ワークショップの開発
ショールーム開設に伴い、何かイベントがあるときにはワークショップを開催したいと思っているところで、瀬尾製作所ならではのワークショップを企画していました。結果として、「鍛金」と呼ばれる技術を使った真鍮または銅製のスプーンづくりをしたいと考えているのですが、ここに至るまでの経緯を記しておきたいと思います。
高岡市の伝統産業である高岡銅器では、この土地で作られた鋳物の底に丸い金属の底板を溶接して貼り付けることで、底のある花器などに仕上げていました。瀬尾製作所はその鋳物の底板をプレスで切断して作ることが私たちの始まりの仕事と聞いています。つまり鋳物産業の町での板金加工から会社が興ったわけで、金属の板を加工することを生業としてきた会社になります。
そして、私たちが今でも作り続けている最も古い製品で「常花」という真鍮で作られたお花がありますが、この一部の製品は昔から「鍛金」の技術を使い、金属の板を叩き出して花弁の丸みを作っていました。
このことから、私たちが行うワークショップでは金属の板を加工する鍛金の技術を使ったものが合っていて、そして比較的加工がしやすい形であるスプーンが日常使いできるものとして良さそうということで、鍛金技術を使ったスプーンづくりがワークショップの候補となりました。
瀬尾製作所は鍛金を中心とした技術を主とするメーカーではなく、金属板やインゴットをプレス機で叩いたり、圧力を加えて加工することを主体としたものづくりを行っています。そのため、鍛金技術においては特に専門的というわけではありませんが、わたしたちのものづくりの基本には、金属の特性を活かした加工があります。金属には、叩くことで変形しながら硬くなる「加工硬化」と呼ばれる特性や、熱を加えると「なまる、なます」と呼ぶ柔らかくなる特性があります。このような金属の不思議な性質を使いながら日々ものづくりを行っていて、ワークショップを通じてこの性質を体験していただければ、参加者の方々にも当社の加工方法や歴史を知りながら楽しんでいただけると考えています。
ワークショップの中身を考えるにあたり、高岡市工芸デザインセンターに相談に行きました。初心者でも安全に、そして使いやすい道具はどのようなものを使えばよいか、鍛金に詳しい方にいろいろとアドバイスをもらいました。
鍛金の技術を使い、スプーンの凹みの部分を叩き出しているところ
金属をなまして柔らかく叩きやすい状態にする
なました金属を冷ましているところ
道具を整え会社でも定期的に開催する前に、まずは10月19日、20日に高岡市で開催されるクラフトフェア「ツギノテ」にこの鍛金ワークショップで参加する予定ですので、ぜひお越し下さい。